桜の下で ~幕末純愛~

桜夜は眠っている振りをしているしか出来なかった。

お母さんをまた一人にさせちゃう…。

哲が居る?…そんな事したら哲をまた縛り付けてしてしまう。

もうお母さんを悲しませたくない…けど…総司……。

どうしたらいいのか分からず、閉じていた目からは次々に涙が溢れてくる。

「桜夜?」

美沙子の呼び掛けに桜夜は目を開けた。

「大丈夫?」

気遣う言葉に益々涙は止まらなくなる。

「…病院、行こう?」

桜夜は小さく頷いた。

美沙子はすぐに桜夜を病院へ連れていった。

桜夜は隔離されそのまま入院生活となった。

総司…まだダメなの?私は総司を忘れるなんて出来ないんだよ?

哲が総司ごと受け入れてくれても想いは消えないんだよ?

哲を選ぶなんて出来る筈ないでしょう?

…お母さんを一人には出来ない…よね?

心が千切れそうだよ…助けて…。

桜夜が入院して二週間が経過した。

美沙子は医師に呼ばれ、過酷な宣告を受ける。

余命一ヶ月

本来なら治る筈の結核。

入院時の状態からしてもまだ助かる筈ではあった。

しかし桜夜には薬が全く効かず、進行が早いのだと言われた。

病室で眠る桜夜を見つめ、美沙子が呟いた。

「連れて行くの?」

桜夜が目を覚ますとガラスの向こうで美沙子が手を振っていた。

お母さん…珍しいな、手を振るなんて。

すると美沙子が突然病室に入ってきた。

ヤだ、隔離されてんのに入ってきたらダメじゃない。

桜夜が驚き目を見開く。

美沙子はクスッと笑い、桜夜の横に座った。

「平気よ、うつらないわ。お母さんお得意の勘」

勘って…。

「ねぇ、帰りたい?」

え?帰る?家にって事?

桜夜が首を傾げる。

「もうね、隠しても仕方ないと思って…。桜夜、治らないって。桜夜が帰りたいなら家に帰ろう」

治らない?何で?

こういう時、私はどんな顔をすればいいんだろう…。

桜夜は黙って首を縦に振った。

そして桜夜は翌日退院し、家へと戻った。