桜の下で ~幕末純愛~

翌朝になると咳と頭痛が桜夜を襲った。

あ~、こりゃ完璧風邪ひいたなぁ。

桜夜が起きて来ないのを心配した美沙子がやってきた。

「桜夜?起きてる?」

「お母さん…風邪ひいたみたい」

桜夜がそう言うと美沙子はベッドの脇に座り、額を合わせる。

お母さんのこれ、何か好きだな…。

「熱はないみたいね。病院行く?」

「ううん。ちょっと咳が出て、頭が痛いだけだから…」

「お母さん、仕事休もうか?」

19にもなった娘に…心配してくれちゃって。

「大丈夫。頭痛薬飲んで寝るよ」

「そう…何かあったら電話してね。そうね、そろそろ哲くんが来るだろうしね」

毎朝健気にね…。

「おす、行くぞ……って、どうした?」

あは、ホントに来た。

「じゃ、仕事行くわね。哲くん、後はよろしくね」

美沙子はポンと哲也の肩を叩いて出ていった。

「風邪かよ」

「誰かさんがカッコつけて寒い中引っ張ってくからでしょう?」

「俺か…」

少しだけ項垂れた哲也をみて桜夜はクスッと笑った。

「大した事ないから。早く行きなよ」

「いい。居る」

「いいってば。熱もないし。講義受けないと留年するよ。一緒に卒業したいんでしょ?」

桜夜は立ち上がり哲也を押し出した。

「もし辛くなったら電話するから。ほら」

哲也は渋々大学へ向かった。

桜夜は薬を飲むと再び横になる。

コンコンと小さく咳をしながらぼんやりとしていた。

…風邪なんて久し振りだな。

咳って思ってたよりキツイね。…総司、辛かったんだろうな。

そんな事を考えながら、いつの間にか眠りについていた。

次に目が覚めた時には哲也が横にいた。

「起きたか。どうだ?」

「哲…。うん、頭痛はなくなったみたい」

咳は止まらなかったが、頭の痛みがなくなり随分と楽にはなっていた。

「お粥でも食うか?」

妙に心配をする哲也を見て桜夜がクスクス笑う。

「そこまで病人扱いしなくていいよ。もう平気。それより何時?」

「もう夜だぞ。7時前」

そんな時間?ずいぶん寝てたんだ…。

「お腹空いたね。何か作ろうか」

桜夜と哲也はリビングへ向かい、丁度帰宅した美沙子と共に夕食を済ませた。