桜の下で ~幕末純愛~

「悪い…。聞かなくても答えは分かってんだ」

普通にしてたつもりだったけどな…。

桜夜は俯いたまま、顔を上げられなかった。

「結婚しないか?」

はぁ?

思いもよらない哲也の突然の言葉にガバッと顔を上げる桜夜。

目を見開いたまま言葉が出なかった。

「今はまだ学生だから無理だけどよ…。働いて落ち着いたら結婚してくれないか?」

今、言ったよね?自分で。答えは分かってるって。

私が総司を愛してるのは分かってるんでしょう?

「おかしな事言ってんのは分かってる。…総司を好きなお前でいいんだ。総司ごと俺のところに来てくれねぇか?」

“戦が終わったらお前等二人を迎えに来る”

そう言った時の土方の顔と哲也の顔が重なって見えた。

ああ…哲はやっぱりひじぃなんだ……。

「簡単に答えられない事も分かってるよ。何年後でもいいぜ、待つのには馴れた」

そんなの馴れちゃダメだよ…。

「どうしてここで?」

公園でなくてもよかった筈なのに。

「総司がこっちにいた頃、勝負を挑んだ時があっただろ」

あの時…。総司がこばって呼ばれた時か。

「あの辺で総司に向かっていったんだ」

哲也は丁度真ん中辺りを指差した。

「今、考えたら無謀だよな。あの沖田総司に挑むなんてよ。一瞬でやられた。当たり前だけどな。」

その時を思い出しているかの様に哲也は笑った。

「…ここで言いたかったんだ。総司にも聞いてほしかった」

…バカな癖してそんな事を考えてたなんて。

泣かせないでよ、哲のくせしてっ。

哲也は一度大きく伸びをした。

「よしっ。帰ろうぜ。寒くなってきた」

そう言えば寒い。日が落ちるのも早くなったな…。

桜夜は家に帰ると窓を開け、月を眺めながらしまってあった櫛を机に出した。

総司…哲からプロポーズされちゃったよ。

妬いてくれてる?

総司ごと来いって…。いいの?そんなに甘えてしまって…。

待つのは馴れてるだなんて。

いい筈ないよね。

けど…待ち続ける方の気持ちも分かる…。

私が総司が迎えに来てくれるのを待ち続けてるから……。

今夜は寒いな…。

もう11月だもんね。窓を開けてちゃ寒いよね。

「ゴホッ ゴホッ」

…風邪ひいたかな?

まぁ、上着なしで公園にいたら風邪もひくか…。