桜の下で ~幕末純愛~

それが確信に変わると、桜夜は笑いだした。

「桜夜…笑った……」

今まで笑わなかった桜夜が突然笑いだした事に哲也は驚いた。

「哲がバカだからだよ」

だってあんなに聡明だった人がこんなバカになってたなんて…。

頭、使い過ぎて真逆になっちゃったの?ひじぃ。

いくらもう考えたく無くなったからって極端過ぎるよ。

桜夜は立ち上がり散らばった荷物をまとめるとカバンを哲也に渡した。

「まだ着替えてないんだから出てよ」

そう言って哲也を追い出した。

…落ち込んだ私を救ってくれるのはいつもひじぃだったね。

またひじぃに救われたんだね。…ありがとう。

…慰め方がひじぃとは思えないやり方だけどね。

ねぇ、総司?私は笑ってもいい?

桜夜は机に置かれた櫛に話しかける。

それに答えるかの様に、机に置かれた沖田の櫛が風に吹かれてコトンと小さく動いた。

桜夜は着替えを済ませると走ってリビングへ向かう。

「おはよう、お母さん」

美沙子に笑いかけた。

その日から桜夜は自分らしさを取り戻していった。

沖田への想いを胸に秘めながら…。

そして気付けはいつも哲也が隣にいた。

月日は流れ、桜夜は19歳になった。

過去で沖田と悲しい別れをした歳に…。

「桜夜っ。公園行くぞ」

夕方、リビングでくつろいでいた桜夜に庭から哲也の声がした。

いきなり来て何を言うかと思えば…。

「何?ヤだよ、寒くなってきてんのに。しかも公園って…この年になって行くもんじゃないでしょ」

「いいから行くんだよっ」

哲也は桜夜を引きずって公園へ向かう。

「分かったから放してよ」

桜夜は哲也の腕を振り払った。

公園まで哲也は無言で桜夜の前を歩く。

気味悪い…哲が無言だなんて。

公園に着くと桜夜はブランコに座った。

哲也がその前に立つ。

桜夜は足を付けたまま少しだけブランコを揺らした。

「どうしたのよ。こんな所に行こうだなんて」

少し躊躇している様な哲也に桜夜が切り出した。

「なぁ…まだ忘れてないんだろ?」

………どうしてそれを今日言うかなぁ…。

よりによって19になった今日に…。

桜夜は俯き、答えられなかった。