桜の下で ~幕末純愛~

翌朝。桜夜は学校へ行く支度を始めた。

引き出しの中から小箱を出す。

ピアス…まだ通るかな?

沖田にもらったピアスを付ける。

プチっと薄く張った皮が破ける音がしてピアスが通った。

痛い…。けどこれで総司と一緒に居れる。

そして伸びた髪を左に寄せ、耳を隠す様に結った。

桜夜が制服に着替えようと、シャツに片腕を通した時 ― バタンと部屋のドアが開いた。

「おいっ。学校行く…」

「きゃぁぁっ」

突然現れた哲也に慌てて後ろを向いた桜夜。

ドアに背を向けた為、傷を哲也に見せてしまった。

その傷に哲也が呆然となる。

「お前…それ…」

ま…前も後ろも見られた……。

哲也は眉をしかめながら桜夜に近付く。

桜夜は急いでシャツを着る。

「俺、この傷…知ってる……」

は?何、言ってんの?

バサッと哲也がカバンを落とし中身が散らばった。

「変な事言ってないで早く出てってよ」

哲也のカバンを拾い上げようとした時、隠す様にカバンに付けられていたモノに気付いた。

これ…これって……

「総司…ひじぃ…」

哲也のカバンごと、それを抱き締める桜夜。

「何で哲がこれを持ってるの?」

桜夜は軽く哲也を睨んだ。

「何だよ、いきなり」

「いいから答えてよ」

哲也がため息をつく。

「知らねぇよ…。気付いたら手元にあった。物心ついた時にはもうあったんだよ。親に聞いても知らねぇって言うし…。ただ、それだけは絶対に手放せなかった。持ってなきゃいけない気がしたんだよ」

知らない?

ううん、その前にどうしてこれがここにあるの?

だってこれは過去に置いてきた筈じゃない。

総司がくれた匂袋…。

あの時、ひじぃが持っていった…二人で待ってろって言って…。

ああ…混乱してきた。

桜夜はカバンを抱き締めたまま座り込んだ。

「おい、どうした?これが何だってんだよ。それよりその傷は何だよ。何で俺は知ってんだ?」

何だ何だって聞かないでよ…。私だって分かんないわよ…。

哲が背中の傷を知ってる…?

ひじぃが持っていった筈の匂袋を持ってる…。

………哲がひじぃ…?ひじぃが哲?

桜夜はもう一度匂袋を見つめた。

間違える筈ない…これは確かに私の匂袋。