桜の下で ~幕末純愛~

翌朝、桜夜は植木屋の主人に此処を出たいと申し出る。

主人は最後まで面倒を見てくれると言ったが、女将は安堵の表情を見せた。

今までの礼を言い、桜夜は深く頭を下げた。

桜夜は沖田の元に向かい、一度ナミの所に行ってくると伝え、そのまま外に出た。

ナミの家に着くと事情を話す。

ナミは快く引き受け、沖田の迎えに自らの息子も連れて来てくれた。

「ナミさん、総司に会う前に…。ナミさんの知る総司とは変わってしまってます。驚かないであげて下さい…」

痩せ細ってしまったから……。

「……そうかい」

そしてナミに手伝ってもらい、引っ越しが始まる。

元々荷物らしい荷物もない引っ越し。

済ませるのは簡単だった。

新しい家はナミが既に掃除を済ませ、生活する為の必要品が揃えてあった。

「いずれ来ると思ったからね」

ナミが笑って言った。

ナミさん…こんな事まで…。感謝してもしきれない。

お陰で直ぐに生活が始められた。

「ナミさん、本当にありがとうございます」

桜夜が頭を下げる。

沖田も横になったまま礼を言った。

「いいんだよ。私もたまに様子を見にくるから」

ナミはそう言うと息子を連れて帰って行った。

「疲れた?」

沖田の脇に座る。

「ゴホッ 私は運ばれて来ただけです ゴホ からね。何も変わりませんよ ゴホ ゴホッ」

ま、確かにね…。

「どうかな?暮らしていけそう?」

沖田は桜夜の手を握り優しく笑う。

「気に入りました。ゴホ お陰で気兼ねなく ゴホッ ゴホ 桜夜に触れていられますね ゴホッ」

気兼ねしてるところ、見た事ないんですけど…?

桜夜と沖田が新しい生活を始めた頃、鎮撫隊に分裂が起きていた。

近藤との数々の行き違いの末、永倉、原田が離脱した。

永倉、原田はその後【靖共隊】を結成。その後は旧幕府軍に合流する事となる。

永倉、原田を欠いた鎮撫隊は松本良順に紹介された、江戸郊外の金子邸に屯所を営設した。

近藤は【大久保大和】と再び改名した。