桜夜が自分の出来る範囲で仕事をしていると、急に周りが慌ただしくなった。

な、何があったの?

桜夜は騒ぎの元を探して走り出した。

そして見たもの…右肩から血を流した近藤の姿。

「近藤さん!!」

駆け寄りたくても近藤の周りに人が多すぎて近付けない。

もぉ~っ、どいてよっ。

桜夜が押し入ろうと必死になっていた時。

「てめぇら、見てるだけなら退きやがれ」

土方が駆けつけ、一声で近藤までの道が開いた。

土方は隊士数名と近藤を抱えそのまま居なくなった。

一瞬の出来事に呆気に取られた桜夜はハッとして土方を追った。

近藤は伏見奉行所に戻る途中、伏見街道で薩摩藩に襲撃され、鉄砲で右肩を撃たれた。

その傷は重症と言え、療養を余儀なくされた。

その為、土方が局長代理を勤める事となった。

桜夜は土方に近藤の看病を願い出た。

「総司はどうするんだ?ここでの仕事に総司の看病。近藤さんまで手が回らんだろうが」

「出来そうにない事は言いません。出来るから言ってるんです」

桜夜が食い下がる。

「あのなぁ、そう言う事じゃねぇ。お前が倒れるだろうが」

え?私?

「お前の気持ちも汲んでやりてぇがな。全てを疎かにしねぇって事はお前が無茶するって事だ。お前に倒れられたら面倒臭ぇんだよ」

心配してくれてるのか本気で面倒臭いと思ってるのか…びみょ~。

「合間に様子を見に行くだけなら許してやる。それで我慢しろ」

我慢しろか…。悔しいけど言ってる事は正しい。

ここで私が倒れたら面倒臭いのも分かる。

ただでさえお荷物だもんね…。

「戦が始まり負傷者が出りゃお前が必要となる。そうなりゃ嫌と言う程看病させてやるさ。それまでは体力を溜めておけ」

私が必要?…またヤられた。

ひじぃが居なかったらきっと私はただ総司にしがみついて落ち込むだけの本当のお荷物になっていたんだろうな…。

「分かりました」

それから桜夜は言われた通り、無理のない程度で近藤の様子を見に行った。