そして十四日、新撰組も大阪へと出発。満点天神に宿営。

しかし、十六日。倒幕派との戦の気配が高まり、戦場が予測される伏見へと転陣を命じられた。

新撰組は伏見奉行所を本陣とした。

近藤は会津藩の人物との面会の為、金戒明光寺へ向かっていた。

う~ん…落ち着かない。

桜夜は横になった沖田の脇に座ってみたり、廊下に出てみたり。とにかくウロウロとしていた。

「桜夜、少し落ち着けないですか? ゴホ ゴホッ 私まで落ち着かなくなりますよ ゴホ」

見かねた沖田が声をかける。

「うん…でもさ……」

分かってるけど落ち着けないのよ。

「おいで」

沖田は布団を少し上げて桜夜を呼ぶ。

その言い方…好きだなぁ。何か特別って感じがする。

桜夜は口元を緩ませた。

「ゴホッ 気持ち悪い顔してないでくださいよ。ほら」

布団をパタパタさせる沖田。

気持ち悪い??

「失礼じゃない?」

そう言って桜夜は布団に滑り込む。

「屯所を離れるのは ゴホッ 嫌でしたか?」

「ううん。そう言う訳じゃないけど。土方さんから脇差もらったり、急に伏見に来たり…。平助くんの事の後から急に慌ただしくて…。何となく、ね」

桜夜は沖田の胸に顔を埋めると急に眠くなりだした。

あれ?何か寝ちゃいそう。

「ねぇ?…ちょっと……寝……て…い…」

そのまま眠ってしまった桜夜を見て沖田は吹き出す。

―寝付きのいい事で…。この先我々の運命は桜夜にとって辛い事となるのでしょうか―

沖田も眠った桜夜につられる様に眠りについた。

桜夜が目覚めた時には辺りは暗くなっていた。

何時だろう。すっごい寝ちゃった…ヤバイな、夜寝れなそう。

まだ眠っていた沖田を起こさない様に布団を出て桜夜は庭へ向かう。

そこには土方が立っていた。

ひじぃ?書き物はここじゃしないのかな?

桜夜の気配に気付き、土方が振り向く。

「てめぇ、飯作れよ。遊びに来てんじゃねぇんだぞ」

「すみません。つい寝ちゃいました」

コツンと優しい拳骨が落ちる。

「休息は今日だけだぞ」

「はい」

桜夜と土方は暫く月を眺めた。