桜の下で ~幕末純愛~

屯所内をあちらこちら探し回る。

はぁぁぁ。まただ…肝心な時に限って見つからない。

あの二人が部屋に居るとは思えないけど…。行ってみよう。

桜夜はまず原田の部屋を訪れる。

「左之さん?居ますか?」

返事はない。

居ないか…。

次に永倉の部屋。

「新八さん、稲葉です。居ますか?」

すると襖が開き永倉が顔を出す。

「桜夜ちゃん。どうした?」

そこには原田も居た。

二人は酒を呑んでいる様だった。

「お酒…ですか?こんな日に…」

桜夜の言葉に永倉と原田が顔を見合わせる。

「一杯だ。酔いはしねぇよ」

永倉が桜夜から視線を外す。

「話があるんだろ?入りなよ」

原田が桜夜を部屋へ入る様に促した。

「「「……………」」」

妙な沈黙が流れる。

「あまり時間がないからな…桜夜ちゃんは平助の事を言いにきたんだろ」

沈黙を破ったのは永倉だった。

「平助くん…。平助くんを守って下さい」

「分かってるよ。近藤さんだってそう思うから俺等が行くんだろ」

原田が桜夜の頭をポンとする。

違うの…退路を空けて平助くんが後ろから斬られた…。退路じゃなくて…。

「ちがっ…そうじゃなくて…守って…」

はっきり言えない自分が情けない…言えないなら…覚悟がないなら来なきゃよかった。

また考えるより先に動いてしまった…。

「言えねぇのも辛いよな。桜夜ちゃんの知る結末は善くないんだろ?」

原田さん…。

「平助を助けるくらいやってのける自信はあるぜ。組長二人が揃ってんだ」

新八さん…。

「殊は動き出した。止めることは出来ねぇよ。なぁ、俺等を信じていつもみてぇに笑って送り出してくれねぇか?」

永倉が桜夜の肩に手を置く。

賭けてもいい?歴史が変わるって…平助くんが助かるって信じていい?

「待ってます。三人揃って戻るのを」

桜夜は二人に笑顔を向けた。

「任せとけ。酒でも用意してのんびり待ってろよ」

「あぁ、旨いつまみも頼むぜ」

「新八さんはやっぱり食べ物なんですね」

桜夜は立ち上がる。

「お邪魔しました。…待ってます」

頭を下げ、永倉の部屋を出た。