桜の下で ~幕末純愛~

そしてとうとう十一月がやってきた。

はぁ~。1年が早過ぎる。もう11月だなんて…。

総司…もう1年ももたない…。私に受け止められる?怖い…。

平助くんもだ…。そして坂本龍馬暗殺…か。

何一つ良い事がない。

十一月に入ると急に桜夜の笑顔が少なくなった事に気付いていた沖田。

―また独りで抱え込んで…この身では何処かへ連れて行く事も出来ませんしね―

そこに仕事を終えた桜夜が帰って来た。

「ただいま。具合はどう?」

「桜夜の具合は? ケホ」

私の具合??絶好調ですが?

「元気だよ。何で?」

「体の具合ではありませんよ ゴホッ 心の具合です」

心の具合…?気付いてた?

黙り込む桜夜。

「おいで」

沖田が布団を少し持ち上げて桜夜を呼ぶ。

ゆっくりと桜夜が寄り添った。

「独りで抱え込むのですか?二人の人生でしょう? ゴホ これから起こる事が言えないのも分かります。話せる範囲でいい… ゴホ ゴホッ 辛さを分けて下さい」

「気付いてたんだね」

「当たり前でしょう?」

桜夜は痩せた沖田の体に手を回す。

「この体では外に連れて行く事は無理です。今の私では話を聞く事 ゴホッ 位しか出来ませんからね」

「こうして傍に居てくれるだけで十分だよ。ありがとう」

沖田の胸に顔を埋める。

「……11月は悪い事ばかりおきるの」

ポツリと桜夜が呟く。

「そうですか…」

「また何も出来ずに見てるだけなの…。何度繰り返してもこれだけは馴れない…」

「一つ、良い事がありますよ。私はまだ生きています。ゴホ 約束は守りますよ ゴホッ」

約束…。ああ…そうだ。総司はまだ生きてる。生き続けようとしてるんだ。

ひじぃにだって笑ってろって言われた。

「ごめんね、心配かけちゃって」

「ケホ 少しは役に立ちましたか?」

桜夜が顔を上げる。

「かなりね。今日はこのまま寝てもいい?」

「勿論」

明日からまた笑って皆を出迎えよう…。

桜夜はそのまま眠りについた。

そして十五日。

土佐藩・坂本龍馬暗殺。

新撰組にも早々に情報は流れて来た。