桜の下で ~幕末純愛~

そんなに笑わなくたっていいじゃない。

桜夜がふてくされる。

「ククッ。いつまでたっても猿から格上げできねぇな。ほら、行くぞ」

土方がそのまま歩き出す。

「土方さんっ。どこ行くんですか?帰りましょうよ」

桜夜は土方の腕を掴んで止めた。

「私が突っ走りすぎました。すみません。戻りましょう」

「最近歩いてねぇからな。散歩に付き合え。団子代はそれでいい。そのうち店もやるだろ」

桜夜の頭をポンとすると土方はまた歩き出した。

…色男。あの時“俺にしとくか”って言われたんだ。まぁ、慰めてくれただけだろうけど…。

それから話す訳でもなく、あてもなく、ゆっくりと歩く。

河原に着くと桜夜は腰を下ろす。

「暑いですね。…今、どうなってるんですか?」

桜夜がポツリと話し出す。

「お前の方がよく分かるだろ」

「最後に行き着く先は分かりますよ…。でも、事件で分かるのはあと二つです」

土方が驚いて桜夜を見る。

「お前…本物の猿だな。それっぽっちかよ」

「歴史、苦手なんですよ。どっちかと言えば運動系です」

あ~あ。すっかりバカがバレちゃったよ。

「薩摩に土佐…厄介事が多いな…。ま、お前が気にする事じゃねぇよ」

薩摩…西郷隆盛。土佐…坂本龍馬。

…坂本龍馬?……坂本龍馬!!

「ああっっっ!」

大声を上げると桜夜はいきなり立ち上がる。

「なっ、何だ」

桜夜は突然走り出した。

「おいっ、待てっ!」

土方が慌ててその後を追う。

坂本龍馬暗殺!思い出した。いけない、あの人は殺されたらいけない!

坂本龍馬が逗留している宿は………寺田屋だ。探さなきゃ。

桜夜は夢中で走る。

―あいつ、無駄に足が速ぇぞ―

河原から町に入る寸前で土方が追い付き捕まえる。

「はぁ、はぁ…。てめぇ…速ぇじゃねぇか。その分を頭に回しやがれ」

土方に肩を掴まれ桜夜は我に返った。

あ…やっちゃった…。

「お前なぁ。考えるより先に行動を興すんじゃねぇよ。少しは学べ」

「……はい」

「何か思い出したのか?」

坂本龍馬を探して私に何が出来るんだろう…。

暗殺されますって言うの?誰が信じる?

「猿以下ですね…」

「まあ、いい。そろそろ団子も買えるだろ。行くぞ」

土方はそれ以上聞かず、桜夜の手を引いて歩き出した。