桜の下で ~幕末純愛~

それからの沖田は穏やかだった。

熱が出て辛くとも、激しい咳に襲われようとも、最後には笑っていた。

そして十五日、新撰組は二度目の屯所移設をする事となった。

元々倒幕派に加担していた西本願寺が土地と全ての費用を負担、不動堂村へ新しい屯所を建設した。

その頃、御陵衛士も善立寺から月真院へと移っていた。

新しい屯所は近藤の妾宅が目と鼻の先だった。

引っ越しも無事に済み、桜夜は沖田と共に縁側に座っていた。

「ここには桜がないんだね」

ポツリと桜夜が呟く。

「寂しいですか?」

「うん。ちょっとだけね。まぁ、登れそうな木はあるからいいけどさ」

沖田が膝に置いてあった桜夜の手を握る。

「桜は嫌いではないのですが ゴホッ 私がタイムスリップしたきっかけが桜でしょう? ゴホ、ゴホッ 桜夜を連れていかれそうで嫌です」

そんな風に考えてたんだ…カワイイかも。

「未来に帰れって言われても困るなぁ。だって未来の1年がこっちで1ヶ月でしょ?こっちの1ヶ月が未来の1年だったら…1年過ごしたら未来では12年だよ!こっちで何年過ごした?……浦島太郎だよ。玉手箱も貰ってないのにっ」

桜夜も沖田もその発想に思わず声をあげて笑った。

「それに総司から離れられる訳ない」

桜夜は握られた手をギュッと握り返した。

「ケホッ 幾つになりましたか?」

歳?私って何歳だ?

「多分18だよ。誕生日がきたら19才になる」

沖田が驚いた顔をする。

おいおい、彼女の年を忘れてんのかいっ。

「そんな驚かなくても…。それなりに大人になってきたでしょ?」

「多分って何ですか? ゴホッ 私に会った時はまだ15でしたよね?」

そうだった。高校に入ったばかりだった。

「うん。ピアスをもらった日に16になった。でもね、タイムスリップして年が戻ったりして、一瞬分かんなくなったよ」

総司は…夏がきたら25才…とうとう25才になるんだ……。

「まだ子供だったのですね ゴホ」

「考えたら私と総司って6歳も離れてたんだね」

夏なんて来なければいいのに…。

桜夜は少しだけ高くなり始めた空を見上げた。