桜の下で ~幕末純愛~

…どうして?総司がこんな事……。

優しかった沖田の思いも寄らない行動に桜夜は驚きと恐怖で身動きが出来ない。

沖田は桜夜に近付くと力任せに着物を剥ぎ取りだす。

「やめてよっ。どうしてっっ。ねぇ、総司ってば」

抵抗しても沖田の力には敵わない。

桜夜の背中の傷が少し見えると沖田の手が止まる。

沖田は背中の傷を指でなぞる。

「剣を振るえない ゴホッ 私に何の意味がある?」

総司……?

「ゴホッ ゴホ 幕臣…私は…取り立てられても意味がない……。何も ゴホッ 守れない…。剣を持てなくなくなった ゲホッ 私に生きる意味があるのかっ。この傷だって土方さんがっっ」

あぁ…総司が悲鳴をあげてる……。辛いんだ…怖いんだ…。どんどん弱っていく自分が許せないんだ……。

天才剣士、剣豪と呼ばれて刀を奮っていた人が今じゃ布団の上…。

剣に生きてきた人に、私が居るから…愛に生きて…とは言えない。

軽々しい言葉じゃ気休めにもならない…。

じゃあ、私には総司を救えないの?どうしたらいいの?

お互いに動く事もなく長い長い沈黙が続く。

ふいにポツリと桜夜が呟く。

「一緒に死のうか…」

背中に触れていた沖田の手がピクリと動く。

「理解してあげられなくてごめんね。私には剣の事は分からないもの。でも、私には総司しか居ない。生きるのが辛いなら一緒に逝くよ」

桜夜は体を起こし、着物を少し直すと沖田を抱き締める。

「一人にはしないから…」

桜夜はその腕に力を込める。

やがて沖田の肩が震え、静かに泣き出したのが分かった。

桜夜はただじっと沖田を抱き締めていた。

どれだけの時間が経ったのか沖田が顔を上げる。

「みっともないところを見せて ケホ しまいました…」

「見せるのは私にだけでしょう?落ち着いた?」

「ええ。また桜夜に助けられましたね」

クスリと沖田が笑う。

「総司の人生だから、好きにしていいよ?嫌がられても私はそれに付いてくから」

「桜夜の人生は?」

「総司」

あ…まるで自分がないヤツみたいだな…私ってば。

「ゴホッ では、二人の人生ですね。責任重大です」

沖田は桜夜の腕からその身を離すと、今度は沖田が桜夜を抱き締める。

「最期まで貴女と生きましょう」

桜夜の額に唇を落とした。