桜の下で ~幕末純愛~

そして六月十日

新撰組が幕臣に取り立てられる事となった。

結成以来の功労に報いる為、格式を定める様にと幕府が会津藩に命じた。

近藤は勿論、皆大喜びだ。

桜夜と沖田を除いては…。

春を過ぎた頃から急に沖田は鬱ぎ込んでいた。

以前の山南を見ている様で桜夜は不安に駆られていた。

休憩になると久々に木に登る。

はぁ~、気持ち良い。

幕臣か…。これで本当に幕府側だ。

もし、幕臣に取り立てられなかったら?別の道もあったかもしれないのに…。

ううん。近藤さんの誠に別の道なんてない…きっと幕臣なんてならなくたって…。

総司…どうしたんだろう。私じゃ何の役にも立たないの?

深いため息だけがでる。

「ぼさっとしてっと木から落ちるぞ、猿」

ひじぃくんっ。もう少し優しげなお言葉ってのはないものかね??

「こんな日に辛気臭ぇ顔してんのはてめぇ位だぞ」

そりゃ、そうでしょうね。

桜夜は木から飛び降りる。

「おめでとうございます」

「お前は目出てぇって顔じゃねぇな」

ひじぃに下手に隠したってバレるもんね。

「幕臣…そんなにいいもんなんですかね…」

「お前に理解しろってったって無理だろ」

ハイハイ…そうですよ。

「総司が鬱ぎ込んでるんです…。まるで…山南さんを見ている様で……不安なんです」

山南の名が出ると土方も表情を曇らせる。

「そうか…」

すると遠くから咳き込む声が聞こえてきた。

総司?

少しすると沖田の姿がはっきりと分かった。

沖田は桜夜と土方が並んでいるのを見るとあからさまに不機嫌な顔をした。

……どうしちゃったの?総司が総司じゃなくなってる…。

桜夜は土方に少し視線を向けると土方と目が合う。

土方も“行け”と言っている気がしてペコリとお辞儀をすると沖田の元へ駆け寄った。

「今日は気分いいの?」

すると沖田は返事もせずに桜夜の腕を掴んで歩き出す。

「ちょっ、ちょっと。どうしたの?痛いよ」

いくら言っても沖田は掴んだ腕の力を緩めない。

そのまま部屋へ戻ると桜夜を放り入れた。

乱暴に部屋へ放り込まれ、桜夜は躓いて沖田が寝ていた布団にうつ伏せに倒れ込んだ。