桜の下で ~幕末純愛~

仕事も一段落すると桜夜は沖田の様子を見に戻る。

そっと襖を開けると沖田は眠っていた。

寝てるんだ…起こさないでおこう。

っと…あとはひじぃか。

そのまま土方の部屋へ向かう。

どうせ寝てないんだろうな…。

「土方さん、稲葉です」

声を掛けるが返事がない。

あれ?寝てる?まさか、あのひじぃが私の言う事を聞くとは思えないんだけど…。

音を立てない様に襖を少し開けて中を覗く。

机に伏せたまま眠っている土方が見えた。

寝てはいるけど布団は使わないのね…。びみょ~。

そのまま静かに部屋へ入ると羽織を肩に掛けた。

桜夜は転がっていた筆を戻そうとする。

と、突然その手を握られた。

「土方さん?」

「すっかり寝ちまった」

いや…手を離してほしいんだけど…。

「荒れてるな」

握った手を見つめる土方。

「ですね。冬は特に。もう暖かくなってきたからすぐに治りますよ」

ひ…引っ込めてもいいかな…。

「でも…温けぇな…」

「寝ボケてるんですか?」

「阿呆。起こしたのはてめぇだろ。辛かったら言えよ」

握られた手が離される。

「楽してキレイな手でいるより私は今の自分の手の方が好きですよ」

そう言って桜夜は土方の部屋を後にした。

―いい女になったじゃねぇか―

土方は再び机に向かった。

ナニアレ?ひじぃ…ドキドキしたんだけどっ。

しかも寝顔すっごい格好よかったし。

あれじゃ、女がほっとく訳ないよね。

はぁ~、少し落ち着いてお茶でも飲もう。

桜夜は台所に向かって走った。

その夜、桜夜が仕事を終え、部屋に戻ると沖田が体を起こしていた。

「ただいま。気分いいの?」

その脇に座る桜夜。

「ゴホッ ええ。今夜は随分と楽です」

「よかった。何か食べられる?お粥、あるよ」

「少しいただきましょうかね」

桜夜は台所に向かうとさっき作った粥を持って急いで戻り、沖田の脇に再び座る。

「はい。少しでも食べてくれるって嬉しい」

沖田は粥を口に運ぶ。

「すっかり ゴホッ、ゴホ 弱ってしまいました…」

「どうしたの?総司は総司だよ」

ふいに桜夜を抱き締める沖田。

「わっ。危ないよ、お粥がこぼれちゃう」

「抱かれるより粥ですか?ゴホ 桜夜らしいですね」

沖田はクスッと笑った。