桜の下で ~幕末純愛~

伊東は翌日の十六日には近藤・土方と盃を交わす。

その晩は御陵衛士を送り出す為、宴会が開かれた。

桜夜は勿論、女中達は皆仕度に追われる。

その合間を縫って桜夜は沖田の様子を見に行く。

「また居ないよ…」

布団が畳まれ、沖田の姿がなかった。

「手のかかる子はカワイイって誰が言い始めたの?ちっとも可愛くないよね…。私、心配し過ぎてハゲるかも…」

桜夜は開けた襖に手をかけたままブツブツと文句を言う。

「それは困りますね。禿げた桜夜はあまり見たいものではありません」

声の主は後ろから桜夜を抱きかかえる。

「じゃあ、あんま心配させないでよっ。どこ行ってたの?」

「今日の宴会は流石に出席しない訳にはいきませんからね。寝てばかりだったので少し散歩ですよ」

お願いだから無理しないでよ…。

「本当に平気?出るなら呑まないでよ」

「禿げますよ。無茶はしませんから大丈夫」

沖田はクスリと笑う。

「………仕事戻るね」

少しため息をついて桜夜は仕事へと戻った。

そして始まった宴会は遅くまで続いた。

皆、呑めや唄えや大騒ぎ。

よく苦情がこないもんだね…。もういい時間だし、先に休もうかな。

桜夜はまず近藤と伊東に挨拶をし、藤堂の元へ向かう。

「平助くん」

「桜夜ちゃ~ん」

うわっ、できあがってんの?

抱き付いてこようとした藤堂を思わず避ける。

畳に倒れた藤堂の脇にしゃがみ、クスッと笑う。

「さすがにもう引っ掛からないよ。…今までありがとう」

手を差し出し、藤堂を立ち上がらせた。

「ちぇっ。最後位いいじゃんか。こっちこそありがとな。桜夜ちゃんの飯、旨かった」

桜夜は藤堂の耳元で小さな声で囁く。

「またデートしようね。総司には内緒だよ」

どうか死なないで…またお茶屋さんに行こうね。

「何だ?でぇとって。総司に内緒って事は…俺にとってはいい事なのか?」

藤堂が首をかしげた。

「多分イイ事なのかな?」

二人は笑い合い固く握手をする。

「バイバイ、平助くん。またね」

「おぅ。体に気を付けろよ」

これが桜夜と藤堂の最後の会話となった。

そして御陵衛士達は21日に第一陣が、25日までには第二陣が善立寺へと移っていった。