桜の下で ~幕末純愛~

「そりゃ、近藤さんや土方さんには感謝してるぜ。新八さんや左之さんにも。あの二人とつるめないのは少し寂しいな。でも、いつからかな…少しだけ新撰組とは道が分かれたんだ。居心地とか仲良しとか、そんな事言ってらんないだろ。今、俺が進みたい道は伊東さんと共にあるんだよ」

ダメなの?どうしても行くの?

「この先を知ってる桜夜ちゃんに俺の判断があってるか間違ってるかは聞かないよ。間違っていたとしても俺は俺の心に忠実に生きる。先がどうだろうと後悔はしないぜ」

平助くん…。初めから私がとやかく言える事じゃなかったんだ。

あがいても簡単に歴史は変わらない…。

桜夜は俯いたまま何も話せなかった。

そこに善哉が運ばれてきた。

ほんわりと湯気が立つ。

湯気が目に滲みるよ…。

「ほら、食おうぜ」

いつもと変わらない藤堂の声に桜夜は少し後悔した。

「余計な事、言っちゃったね…ごめん」

「何言ってんだよ。少し嬉しかったぜ、桜夜ちゃんが引き止めてくれてさ」

単なるワガママみたいだったけどね…。

「ありがと」

二人はゆっくりと善哉を食べた。

屯所への帰り道。辺りは夕焼けに包まれていた。

「ねぇ、平助くん。またこうやってぜんざいとかお団子とか食べに来れるかな?」

「おう!桜夜ちゃんからの誘いを断る訳ないだろ」

その後は藤堂と出会った頃の話から池田屋に桜夜が現れた事、誕生日に悪酔いして膝枕をした事、今まであった思い出を話ながら屯所へ戻った。

「遅くなっちまったな。総司、心配してんじゃねぇか?」

「あはは、平気だよ。ちゃんと平助くんと出掛けるって言ってあるから」

「俺、此処を出てく前に殺されそう」

…総司を何だと思ってんの??

「じゃ、また明日ね」

「おう!またな」

お互いに手を振って別れた。

部屋に戻ると沖田が布団から体を起こしていた。

「ただいま。寝てなきゃダメじゃない」

「床擦れしてしまいますよ。土産は本当にない様ですね」

沖田が少しふてくされる。

藤堂を引き留められず、歴史は変わらない事を痛感した桜夜は、沖田の労咳も変わらないものだと改めて思い知らされた。

桜夜は沖田の脇に座ってその手を握りしめる。

「私に言えない事をしてきたのですか?」

沖田がクスッと笑ってその手を握り返した。