桜の下で ~幕末純愛~

三月十三日

伊東は近藤・土方に対し、新撰組離脱を申し出た。

今まで伊東が水面下で数々の根回しを行っていた成果もあり、近藤等も承諾せざるを得なかった。

十五日には京都奉公・大久保、会津藩公用方・野村と相次ぎ面会、承諾を得た。

―御陵衛士―

伊東は分離に際し、永倉か斎藤のどちらかを同行したいと願い出る。

近藤は斎藤の同行を許した。

伊東とすれば新撰組幹部を引き抜いたつもりでいた。

が、近藤は斎藤に内偵の密命を与えていた。

そして新撰組と御陵衛士の間には今後の隊士移籍を禁止する事が約定された。

藤堂は御陵衛士として分離する事が決まっていた。

とうとうその時が来たんだ…。

平助くん…。どうにかならないのかな。

桜夜は考え込んでいた。

神様ごめんなさい。歴史をかえちゃうとか、もういいや…。

とりあえず平助くんと話してみよう。

桜夜は藤堂を探しに行く。

あ、いた。

「平助くん」

桜夜が駆け寄る。

「桜夜ちゃん。どうした?」

どうもしてない…。切り出しにくいな…。

「行っちゃうの?」

「ああ。そだな」

立ち話じゃ無理だよね…。

「そっか…ねぇ、これから空いてる?」

「おう。何かあんのか?」

説得!って言えないよね。

「甘いもの、食べに行かない?…もうじきこうやって簡単に会えなくなるし……」

少し伏し目がちになる桜夜。

藤堂は一瞬だけ顔を曇らせた。

「そーだな。じゃ、奢ってやるよ。大体桜夜ちゃん一文無しだろ」

「あ…そうだった」

そんな桜夜を見て藤堂が大きく笑う。

「ちゃんと働いてんだから貰えばいいのに。ま、貰ってても俺が奢るけどな。じゃあ、門の前で待ってるよ、支度したら来いよ」

軽く手を上げ、藤堂は門に向かって行った。

「こんな事があるならホントお給料もらっとくんだったな」

女中の仕事をしているからきちんと支給すると近藤は桜夜に言ったが、貰っても使い道がないからと断り続けていた。

桜夜は一度部屋へ戻る。

寝ていた沖田が目を覚ましていた。

病は悪化の一途を辿り、最近は本当によく熱を出す様になった。