桜の下で ~幕末純愛~

十二月五日。

十五代将軍に徳川慶喜が就いた。

徳川家最後の将軍か…。

年が明けたらじきに平助くんが居なくなる。

御陵……何だっけ?

はぁ~、だからひじぃに“頭が足りねぇ”とかって言われるんだよね。

どうにかして平助くんをここに残せないんだろうか…。

歴史を変えちゃいけない…。飽きるくらいに言い聞かせてきたけど…。

平助くんを助けるくらいは許してもらえないかな。

「桜夜っ」

沖田に声をかけられハッとする。

あ…いけない。総司と居たんだ。

久々に二人一緒の休日だった。

「何か考え事ですか?」

「う…ん…。来年の事」

平助くんが死ぬなんて言えない…。

「来年起こる事は覚えているのですね」

…いい事じゃないけど。歴史が変わらないなら、総司もきっと悪化する…。

「結局は何も出来ないから…今さら悩んでもしょうがないんだけどね。知ってて何も出来ないんじゃ、知らないのと同じだね」

桜夜は無理に笑う。

沖田がスッと立ち上がり桜夜に手を差し出す。

「久し振りに茶屋に行きましょう。こういう時は甘いものです」

「冬だよ。寒いよ。風邪ひいたらどうすんの」

咳、我慢してんじゃん。

「子供は風の子ですよ」

…キミ、立派な大人ですよ。

刀ぶら下げた子供なんて見た事ないよ。

「ずいぶんデッカイ子供だね」

沖田がクスッと笑う。

「手のかかる子供でしょう?」

「手のかかる子ほどカワイイって言うしね」

桜夜は沖田の手をとる。

「桜夜はあまり手がかかりませんね」

ククッと沖田が笑う。

可愛くないってかっっ。

「じゃあ目一杯手をかけさせてあげるよ」

笑いながら茶屋へ向かった。

いつまでこうして笑い合っていられるんだろう。

純粋に楽しめない自分が嫌だ。

そんな桜夜の気持ちを知ってか沖田が繋いだ手の力を強くする。

「時間は止まりませんよ。たくさん笑うって約束したでしょう?」

総司といい、ひじぃといい…何ですぐ分かるのかなぁ。

「桜夜は分かりやすいんですよ。やはり、少しは手がかかりますね」

クシャっと桜夜の頭を撫でた。

―年が明ければ目まぐるしい日々が待っている。