桜の下で ~幕末純愛~

沖田は負けたという顔をする。

「折角今年のプレゼントを選びに行こうとしたのに」

巡察じゃないんかっ。

「サボりじゃん。それにプレゼントなんていらない」

あ……ひじぃから貰ったんだ…。隠したら喧嘩になる?

付けなかったらひじぃに悪いか…。

「あのね、土方さんから貰った…」

遠慮がちに玉簪を出す。

沖田は驚いた顔をして固まった。

「あの土方さん…が……ですか?」

「あの土方さんです…てか、あんなの二人もいらないよ」

沖田が吹き出す。

「“あんなの”は失礼ですよ」

よかったのかな?妬いてくれなかったのはちょっと残念だけど、隠すよりいいか。

「桜夜が貰った事を隠したら土方さんを斬りに行くところでした」

ニヤッと沖田が笑う。

………言ってよかった。

「土方さんに先を越されちゃいましたね」

「何もいらないって言ってんのに、どうしてこだわるの?」

沖田が抱き締めた腕の力を強めた。

「桜夜を残して逝くからです」

こんな時に現実を突き付けないでよ…。

欲しいものはある…。けど言っちゃいけない。総司を困らせるだけだから。

でも…

「形を残すなら…総司を頂戴」

思わず口をついてしまった。

「桜夜?」

「1年後も5年後も……10年後も…20年後も…プレゼントをくれるって言うなら…総司を頂戴」

どんなにねだっても絶対に貰うことは出来ない…

そしてあげる事も出来ないプレゼント。

しかし桜夜にとってはそれ以外に欲しいものなどなかった。

「………無茶を言いますね」

ポツリと沖田が言う。

とうとう言っちゃった…きっと呆れてる。

沖田は桜夜の額に唇を落とす

「どれだけ守れるかは分かりませんけれど…まずは来年。プレゼントは必ず渡せると約束しますよ」

「…ごめんなさい」

今まで我慢していた涙が溢れそうになる。

「桜夜の欲しいものが分かってよかったですよ。…一年づつでしか約束は出来ませんけれど」

いいの?単なる私のワガママなのに…。

「桜夜がそんなに私を欲しているとは知りませんでした」

沖田は深く深く口づけた。