桜の下で ~幕末純愛~

ひじぃ…。忙しからってストレス解消に私を使わないでほしいんだけど…。

「顔はどうでもいいじゃないですか。ちゃんと掃除してますよ」

土方はフッと笑うと桜夜に向かって何かを投げた。

もうっ、いっつも投げるんだから。

慌てて受け止める。

え?これって…玉簪?

驚いた顔で土方を見上げる。

「去年は拾いもんだったからな。それでも挿して足りねぇ頭を飾っとけ」

それだけ言って踵を返す土方。

誕生日を覚えててくれたの?

あっ、行っちゃう。

桜夜は急いで立ち上がり土方の腕を掴む。

「お礼も言ってないのに行かないで下さいよ」

「礼はいらねぇ」

ぷっ。照れてる。こんな事ひじぃに言ったらゲンコツされそうだけどカワイイ。

「そんな訳にはいかないですよ。ありがとうございます。大切にします」

桜夜は頭を下げた。

「ああ。そういや総司はどうだ?」

「今日はダルいみたいで寝てます」

沖田は朝から体のダルさを訴えた。

それでも隊務に就こうとしたのを桜夜が近藤に言い、無理矢理休ませていた。

「そうか。ついてなくていいのか?」

「総司が大した事ないから行けって…仕事は待ってくれませんしね」

本心ではつきっきりでいたかった。

「ちょくちょく様子は見に行ってますから」

「お前の薬は使わねぇのか?」

う…イタイとこ突くね…。

桜夜は首を横に振る。

「今のところは…鎮痛剤はどうしたらいいのか…正直分からないんです」

土方はポンと桜夜の頭に手を置く。

「考え過ぎんなよ。只でさえ頭が足りねぇんだ」

そう言って土方は去っていった。

猿の次はバカ扱い?

ありがと、ひじぃ。

その後も仕事の合間に沖田の様子を見に行き、また仕事に戻る桜夜。

夜にはクタクタになっていた。

意外と疲れた…。

部屋に戻ると沖田が座っていた。

「ただいま。寝てなくて平気?何か食べる?」

「もう平気ですよ」

桜夜が沖田の横に座る。

「やっぱ心配。寝ててよ」

桜夜は沖田を布団に寝かせようとした。

沖田は苦笑いをして桜夜を抱き締める。

「まだ病人扱いはしないで下さいよ。今日だって平気だったのに、桜夜が近藤さんに言うから…」

「土方さんに言ったら総司、引かないじゃない。こういう時は近藤さん」

桜夜がクスッと笑った。