沖田が後手にピシャリと襖を閉める。

襖の前に立ったままの沖田と尻餅をついたままの桜夜。

うっわぁ。気まずい…。

ひじぃにくっついて島原行った方がマシって感じ?

つーか平助くんが悪酔いするからっ。

口を滑らせた私が悪い?だなぁ…。

忍法就寝の術で先に寝ちゃう?…状況悪化するね。

謝るが勝ち…かな。

桜夜は恐る恐る顔を上げる。

「総司、ごめんなさい」

上目使いに沖田を見る。

その顔からは怒っているのか呆れているのかは読み取れなかった。

沖田は桜夜を通り越し、机の引き出しから何かを取り出すと桜夜の前に座った。

「怒ってる?」

「いいえ。少し驚きましたけど」

沖田は苦笑いをする。

「後味の悪い終わり方でしたが…まぁ、平助の悪酔いのお陰で邪魔者の排除が出来たので由とします」

排除って…。

「桜夜、手を出して下さい」

手?何で?とりあえず出すけど…。

桜夜は右手を沖田の前に出した。

「おめでとう」

沖田はそう言うと小さな包みを桜夜の手に乗せた。

「これは?」

「プレゼントですよ」

え?だってもう貰ってるよ?

「だって…髪紐」

「それは去年の分です。去年は渡せないまますぐにあんな事になってしまいましたからね」

これが今年の?いつ買いに行ったの?

「開けてもいい?」

「勿論です」

桜夜が包みを開くと漆黒に桜の花びらが描かれた櫛が入っていた。

「く…し?」

そういえば何か意味があるって…。

「櫛を贈るのに意味があると言ったのを覚えてますか?」

桜夜は頷いた。

「櫛には様々な意味があるのですよ。あまり良い意味はないですけれど」

イイ意味じゃないの?

沖田は桜夜の手の平に指で文字を書く。

「櫛は“苦”と“死”です」

そ、それってダメダメじゃん。

「桜夜は“苦”も“死”も覚悟の元で私と共に生きてくれますか?」

うそ…。プロポーズみたい…。

苦と死…史実の総司そのもの…。でも、違うよ。

桜夜は首を横に振った。

沖田が驚く。

今度は桜夜が沖田の手の平に文字を書く。

「でも…“久”と“幸”の意味ならいいよ」

「“久”と“幸”?」

「総司とは“久”しく“幸”せで居たいから」

そう言って桜夜は笑った。