桜の下で ~幕末純愛~

「あのぉ。ごめん…ね?」

少し高い声を出してみる。

「可愛くも何ともねぇぞ」

やっぱり…。総司、ごめん。私、ここでひじぃに殺されますっ。

桜夜は覚悟を決めて飛び降りた。

「で、あれは何だ」

「ク…クナイです」

ゴンと土方の拳骨が桜夜の頭に落ちる。

「いっっったぁっっ」

桜夜は思わず頭を押さえて踞る。

「そんな事ぁ分かってんだよ」

だって、何だって聞いたじゃん。

「てめぇがこんなもん扱うんじゃねぇ」

ハイ、ごもっともです。

桜夜は立ち上がり土方を見て謝る。

「申し訳ありません」

すると土方は桜夜の頭をグシャっとして

「悪ぃ、痛かったな。もうするなよ」

そう言うとそのまま行ってしまった。

え?もしかして終わり?これで?

延々と怒鳴られるのを覚悟していた桜夜は呆気に取られた。

とりあえず仕事、戻ろ。

あっけない終息に何故か納得がいかなかったが、桜夜は仕事に戻った。

その夜、桜夜が部屋に戻る途中に永倉に会った。

「おー、探してたんだよ」

「私を?何でしょ」

永倉は嬉しそうにニヤニヤしている。

その顔、何か怖いよ…。何企んでんの?今日は怖いことだらけだよ。

「明日は呑むぞ。つまみ用意しといてくれよな」

はい?予告?

桜夜が首をかしげる。

「お前さんのばぁすでぇだろ」

ばぁすでぇ?へ?ああ、誕生日ね。

総司からは先にもらっちゃったけど、明日だもんね。

「覚えてんだぜ、ちゃんとよ。ばぁすでぇ」

総司に聞いたな、その“ばぁすでぇ”って…。嬉しそうに使ってんのはいいケド、笑えるよ。

「まぁ、確かに明日ですけど…新八さんは呑みたいだけじゃないですか。しかも何で主役の私がおつまみ用意するんですかぁ?」

「固ぇ事言うなって。忘れんなよ」

永倉はガハガハ笑って行ってしまった。

あのぉ、当日は総司とまったり過ごしたかったんですが?

一応公認だよね?遠慮するのが普通だよね?

普通…じゃないもんね、ある意味。

ま、いっか。

桜夜が部屋に戻ると沖田にも言われる。

「明日は宴会だそうですね」

二人で苦笑いをするしかなかった。