桜の下で ~幕末純愛~

翌日、桜夜は休憩時間に木に登っていた。

子供かぁ。総司は絶対反対するよね…。死んでくからって。

つっても、私の体じゃムリだし。

タイムスリップしてからアレがこない何て言えないもんね。

タイムスリップのせいなのか、精神的なものか、桜夜の生理は止まっていた。

「何、呆けとんのや」

突然桜夜の枝の一つ上から降ってくる声。

「烝くん。イキナリ上から…怖いよ」

山崎はケタケタ笑う。

烝くんが来てくれてよかったかも…。またバカみたいにへこむトコだった。

そう言えば、前に助けてもらった時、スゴイ正確にクナイ投げてたな…。

「ねぇ。クナイって難しいんでしょ?」

「何や、唐突に」

山崎が驚く。

「いや、前に助けてもらった時に凄かったなぁって。深い意味はないんだけど」

「投げてみるか?」

思ってもいなかった答えに今度は桜夜が驚く。

「えっ?いいの?そんな簡単に言っちゃう事?」

「ええ、ええ。ここから下に投げるくらいならな。今なら誰も通らへんし」

えへっ、やっちゃう?

「やってもいい?」

山崎から苦無を借りて手に持つ。

「桜夜、下に投げるんやで」

「はーい」

桜夜は思いっきり苦無を投げる。

「「あっっっ」」

桜夜の投げた苦無は下には向かわず、斜めに飛んでいく。

そこに通りかかる人影。

ヤバイっ!

「危ないっ。よけてーっ」

桜夜が必死に叫ぶ。

その声に気付いた人影が振り返る。

その顔に桜夜と山崎の顔が一瞬にして青ざめた。

ひじぃ…。

土方は自分に向かってくる苦無に驚きながらもそれを避けた。

「す…烝くん…どうしよ…あれ?うっそ、いないっ」

山崎はいち早く逃げ出していた。

逃げた?ずるいっ。私を生け贄にしたっ。

ここで降りても捕まるよね…。ど、どうする?

オロオロしているうちに土方が桜夜の下まできていた。

「降りろ」

「す…すみません。あ、でも降りれません」

「もう一度しか言わねぇぞ。降りろ」

顔が鬼だっ。ムリ、ムリ、ムリッ。絶対ムリ。

誰かっ、助けてぇ。