桜の下で ~幕末純愛~

幸せな時は過ぎるのが早く、瞬く間に春が過ぎ夏も終わりもう秋が訪れる。

久し振りに沖田と同じ休みに桜夜は浮かれていた。

行きたいトコ。あるんだ。

「ね、今日、壬生寺に行きたい。こっちに越してから花ちゃん達と遊べてないし」

「桜夜にしては中々いい事を思い付きましたね」

沖田は意外だという顔を向けた。

何、それ…。人をバカみたいに言って。

「では、帰りに町で買い物もしましょうか」

「買い物?何か足りない物あった?」

沖田はクスッと笑う。

「こっちに居ると誕生日を忘れるんですね」

あ…ホントだ。物欲がなくなってる。

二人は壬生寺へ向かった。

「は~な~ちゃ~ん」

桜夜は花を見付けると手を振りながら走り出す。

「あっ、おねえちゃん」

花も嬉しそうに駆け寄ってきた。

沖田はかくれんぼや鬼ごっこをして遊び、桜夜は花とどんぐりを探していた。

皆、夢中になっていて気付いた時には昼をとっくに過ぎていた。

沖田は子供達に一旦帰る様に言い、桜夜と花にも声をかける。

「またね、花ちゃん」

「うんっ」

両手いっぱいどんぐりを持って花は嬉しそうに帰って行った。

「本当に可愛いですね」

愛しそうに子供達を見送る沖田。

「総司はホント、子供好きだね」

子供…か。ほしいな…総司の子。

なっ、何を考えてんの?私ってば…

それに今の私の体じゃ無理…。

一人で百面相をする桜夜に沖田が笑う。

「行きましょうか。私には桜夜が居れば十分ですよ」

…バレてる。恥ずかしい。

二人はそのまま町へ向かう。

「何か欲しいものはあります?」

「……ない。ヤバイくらい思い付かない」

クスッと笑う沖田。

「では、私が決めてしまいますよ」

「ダメ。高いのにいくから」

今度は溜め息をつく沖田。

「いつまでも決まらないじゃないですか」

「そうなんだけどぉ。物なんていらないんだもん」

その時、強い風が吹き桜夜の髪紐が切れて飛んでいった。

「あっっ」

飛んでっちゃった…まぁ、使い込んでたからいつ切れてもおかしくないか。

あ、欲しいものが出来た。

桜夜と沖田の目が合う。

「髪紐だね」

「ですね」

二人はクスッと笑い髪紐を買って帰った。