桜の下で ~幕末純愛~

山崎は屯所へ戻ると土方を探す。

―こんな時に限って部屋におらん―

すると沖田の部屋から土方の気配を感じた。

―ここや―

「副長、山崎です」

襖は閉じられたまま声だけが返ってくる。

「何だ。急を要するのか」

山崎はかいつまんで説明をする。

桜夜が連れ去られたと言ったところで襖が開いた。

「何だと?何処だ」

今にも駆け出していきそうな土方の勢いに山崎が驚く。

すると土方の後ろから声がする。

「私が行きますよ」

沖田が目を覚ましていた。

「総司。お前いつ…。しかしお前が行くのは無理だ。辛抱しろ。必ず助け出してくる」

土方は沖田を制する。

「いいえ。桜夜を助けるのは私以外には居ません」

沖田は土方の制止を無視すると隊服に着替えた。

―こいつ…咳してねぇぞ―

「急ぎましょう。案内して下さい」

そう言うと沖田は山崎と共に駆け出していた。

その頃、山小屋に連れ去られた桜夜が目を覚ます。

鳩尾って…何か気持ち悪い…。つーか、ここはどこ?

は?私、縛られてんじゃん。

桜夜は後手に胴体を縛られ、壁に寄りかかった状態だった。

辺りを見回すと知った顔が三つ。更に見知らぬ顔が三つあった。

明美さん…ううん、綾って名前だったんだ。

それと…何で新撰組にいたはずの隊士が?スパイ?

徐々に自分の置かれた立場を理解していく桜夜。

…私は総司を呼び出すためのエサか。

だから明美さんは私にあんなに執着してたんだ。

つーか無理じゃん…。総司今、意識ないし。

もし助かっても怒られる?

近藤さんはやだなぁ。だったらひじぃのお小言の方が聞き流せるな。

つーか、死ぬかもしれないんだよね?私。

どうせ死ぬなら総司の腕の中がいいなぁ。

どうして死ぬかもしれないのにこんな事、考えてられるんだろう…。

もしかしたら死ぬ時って冷静になれるのかな。

桜夜がそんな事を考えていると綾が目を冷ました桜夜に気付いた。

「気分はどう?悪いけど暫く大人しくしていなさいね。もうすぐお迎えがくるわ。大切な人が死んでいく様をゆっくり見ていなさい」

綾はクスリと笑う。

気分最悪。んでもってその上から目線、ムカつく。

桜夜は綾を睨んだ。