桜の下で ~幕末純愛~

その日を境に沖田の態度が急変した。

屯所内でも顔を合わせる事がなく、部屋に戻っても会話がない。

静かな部屋に時々沖田の咳だけが響いた。

何より桜夜と沖田の布団の距離があからさまに離れていた。

私…何かした?

この布団…そりゃ、今までだって離れてはいたけど…これ、スゴイんだけど…

とても話しかけられる雰囲気ではなく、桜夜はどんどん沈んでいった。

沖田とそんな状態になってからもうひと月になろうかという頃。

桜夜の憂鬱に追い討ちをかける様な出来事が起こる。

伊東からの講義に出る様にとの誘いを断り続けていた桜夜にとうとう腹を立ててしまった。

「稲葉さん。茶をお願いします」

台所で仕事をしていた桜夜に伊東が言う。

「はい」

まただよ。ほんっとに勘弁してよ。

後ろでお菓子つまんでお茶飲んでるオバチャンがいんじゃんっ。

桜夜は嫌々伊東の部屋に向かった。

「お茶、お持ちしました」

「入りなさい」

伊東の声を受け、部屋に入る。

いつもの様にお茶を置くと帰ろうとした。

しかし今日は伊東が桜夜の腕を掴み離さなかった。

「な、何でしょうか?」

「何故講義に参加しないのです?」

そんなの私の勝手じゃんっ。キモいから離してよっ。

「貴女は此処の色情婦なのですか?」

はぁぁぁ?

「誰に取り入ったのですかね?やはり同室の沖田くんですか?あぁ、それとも土方くんか…何両です?」

このエロオヤジ。逆恨みもいいところじゃんかっ。

桜夜はその手を振りほどくと、伊東を睨み付けた。

「違いますっ。失礼します」

そう言って伊東の部屋から走って逃げた。

しかし翌日には色情婦の噂が瞬く間に広まっていた。

新しい女中達の視線が冷ややかだった。

その中で、味方はナミだけだった。

エロオヤジの逆恨みでこの有り様だよ。どうしてくれんのっ。

総司はシカト、オバチャン達の痛い視線…。

…大殺界だ。

その晩、沖田が珍しく話しかけてきた。

「部屋を出ていただきたいのです」

は?で、空き部屋のないココで私にどうしろって?

「明日にでも近藤さんに報告しますので。ゴホッ いいですね、桜夜さん」