気付いた時には カバンを掴んで、部屋から飛び出していた。 アタシの名前を呼ぶ隆志を 振り返ることもなく走った。 外は雨。 ほんの数分で、手は赤くかじかんだ。 こんな時でも容赦のない土砂降り。 立ち止まり 無理やり開いた目で空を見上げると 滲んだマスカラが 目に入って痛かった。 頬を流れる冷たい雨に温かいものが混じる。