【実話】アタシの値段~a period~

「遅い!逢いたくて死ぬかと思ったーッ」


鍵のかかってないアパートの部屋のドアを開けると


直人が奥から満面の笑みで走って来る。


『それくらいで死なないよ(笑)』


子供みたいに、邪気もなくギュッと抱きつかれると


アタシはいつも
涙が出そうになる。


すっぽりとアタシを包む大きな身体を抱き締め返すと



「大好き」


小さく降ってくるその言葉に


アタシはまた歯を食いしばり、溢れかけた涙を自力で止めた。





人の体温って

こんなに温かいものなんだ…





そう思うと、涙が溢れてくる。









人の温もりに触れる時

決まって歯を食いしばる癖は


大人になった今でも変わらない。