【実話】アタシの値段~a period~


いつもの帰り道。


真夏の陽射しはアスファルトを焦がし


反射した熱が私にまとわりつく。


ゆらゆら揺れる陽炎。


ジリジリと暑い。



近くにある自販機で


スポーツドリンクを買ったアタシは


通り道にある神社の長い石段をのぼった座った。


ここから家までは3分で着く。


だけどアタシはいつも
この石段で暇を潰した。



頭の下にカバン置いて寝転ぶと


石段の両脇を取り囲むように並ぶ大きな木。


その真ん中に広がる
どこまでも青い空。



いつか空を飛べる気がして


両手を力の限り伸ばしていた子供の頃を思い出し


そっと手を伸ばし‥


‥かけてやめた。


望むことと悲しむことは、直結しているのだと


今の私は知っているから。


望む強さの分だけ


手に入らなかった時の悲しみは深い。


それなら


望まなければいい。




望まなければ、悲しむことも、失うこともないのだから。