『斉藤隆志?』 振り返ったユキは、俺のことをフルネームで呼んだ。 初めて名前を名乗った時、俺はあえてフルネームを言った。 そこには意味があった。 彼女の反応を試したんだ。 けれど、ユキはやっぱり何も知らなかった。 それはそれで、悲しい気もしたけど そうじゃなければ、彼女と俺が、こんな風に、会うことはなかっただろう。