『浩介…やっぱ何かあった?』
あまりに静かな部屋の中
あまりに真っ直ぐな浩介の瞳に
アタシは耐えきれず口を開いた。
「俺さ……県外に引っ越そうと思ってるんだ。」
……その言葉が
アタシの耳を通り抜け
脳に到着するまでに
どれ程時間がかかっただろう。
『………え?』
思い詰めたように
額に手をあて
話し出した浩介は
今の会社を支社として
隣の県に本社を構えるつもりなんだと言った。
それも、すでに
準備段階なんかじゃなくて
来月から住む部屋も決まっているのだと。
『それで最近忙しそうだったんだね……。』
その他にも浩介は
いろいろ難しい話しをしていたけれど
無知なアタシには
半分程しか理解できなかった。
「まぁ、近いし……月に何回かは帰ってくるけどな。」
心が沈んで行く。
悪い予感は
5分と経たずに
こんなにもあっさりと
現実のものとなった。

