「それはないんじゃないか?隆志君がそんな器用には見えないね。」
…確かに。
『だったら尚更…』
会えもしないその女を想い続ける隆志…
こんなに近くに居るアタシと天秤にかけても
想いを絶ちきれないなら
アタシは事実上の
2番目だ……。
『…よくさ…"好きだからこそ、相手の幸せを願う"って言うけどさ
そんなの、嘘だと思わない?
本当に好きなら、そんな風には思えないよ。
アタシはもし、隆志と別れても
隆志の幸せなんて願えない。
アタシの居ない所で、アタシじゃない誰かとの幸せなんて願えない。』
それならいっそのこと不幸になって欲しい、
そう自分で言って悲しくなった。
アタシはやっぱり
歪んでいるのかも知れない。
冷めた珈琲の水面は
アタシの汚れた姿を鮮明に映している。
「まぁ、でもそれは
性格の違いもあると思うし
離れる側か、離れられる側か、って事でもあると思うし
幸せを願えても、そうじゃなくても
そんな事で愛情の重さは計れないと思うな。」
『そ…うだよね。』
アタシはなんだか、当たり前の事を言われたような気がして
恥ずかしくなった。
「愛情なんて、形が違えば外目に大きくも小さくも見えるけど
重さなんて、本人にしかわかんねぇんだよ、きっと。」
雨が止んだベランダに出て、
浩介は空を見上げる。
「でもあれだな。
隆志君はきっと、お前と同じだと思うよ。」

