再び、携帯の液晶に視線を戻すと 発信ボタンを押そうとする親指を、自力で制御した。 毎夜、俺は、こうして自分と戦うのだ。 いけない、と分かっていながら 自分との戦いに負けた夜もあった。 けれど、彼女が電話に出たことはない。 ユキ‥ 苗字すら知らない彼女のことを 他の女性とは違う目で見るようになってから、どれ程経っただろう。 3ヶ月前の、あのクラブで出会った夜‥ 本当は、その前から彼女のことを知っていたのだ。