「さっきの男…本当に彼氏じゃないの?」
そんな俺の質問に
思い出した不快感を隠す事なく彼女は
『違うよ。アタシの彼氏ではないよ。』
と、露骨に眉を寄せ
ポケットから取り出した煙草に視線を落とした。
いやいや、男ならまだしも
16の女の子が煙草って…
それもマヤの綺麗であどけない顔には
とてつもなく似合わない。
『アイツ、アタシの友達の彼氏なの。…ねぇ煙草もってる?』
湿気ってもう吸えない、と煙草を握り潰したマヤ。
そんなことより、彼女がサラリと言った言葉に引っかかる。
「友達の彼氏って…」
『アイツね、ずっと好き好き言って来てて、悪いヤツじゃないと思ったしね、付き合おうかな~って思った途端…
ははっ…友達の彼氏だって知ったの。』
ふざけた様に笑い飛ばしながら
窓の外に視線を向けたマヤの目は
見る見る赤くなっていく。
無言で俺が差し出した煙草を一本とりだして
『でね、詰め寄ったら、あっちとは別れるからって…で、さっきの修羅場に至る。みたいな?
別に、凄い仲良い友達ってわけじゃないんだけどさ。』
そんな男、最低でしょ?
と付け加えて
煙草に火を点けた彼女は
今にも溢れそうな涙を瞳に溜めて
笑ってみせた。
その笑顔は、俺なんかより
ずっと大人の女の様で
気迫負けしそうになった俺は
「そんな男ばっかじゃねぇよ。」
と、余裕を振り絞って
マヤの濡れた髪を撫でた。

