「マヤちゃん…だよね?いいの?彼氏帰ったみたいだけど。」
『彼氏じゃないし。』
冷めた目をして
一瞬こちらを向いた彼女からは
やはり、昨日の無邪気さが微塵も感じられなかったが
その分、やけに大人びていて
俺の頭からは
16歳という事実が
すでに吹っ飛んでいた。
「…タオルとか積んでないし、送るよ。寒かっただろ?」
暖房を強めた車内。
これっきりにしたくない、
それが本音だった俺の申し出は
『いい。』
そんな短い一言で
スッパリと切り捨てられた。
「え?ちょっ…」
―バタンッ
再び土砂降りの中に戻って行った彼女は
コンビニに背を向け、その先の路地を歩き出した。
…なんなんだよ。
突然向けられた拒絶に
半分イラつきながら
もう半分は落ち込みながら
ギアをバックに入れた。
眠気?
すでにそんなもの
存在さえ忘れていた。

