だけど
下唇を噛み締め
何も言ってはくれない隆志の横顔を見つめながら


お腹の中が
冷たくなって行くのを感じた。






『安心しなよ、捨ててなんかないし。』




そう言いながら立ち上がって


向かった先は
寝室のクローゼット。



赤い時計を取り出して
リビングに戻ると


やっと顔を上げた隆志が


何かを言おうと口を開きかけ、


アタシはそれを聞くこともせずに


フローリングめがけて
力いっぱい時計を投げ付けた。







『そんなに好きなら
その女と戻ればいいんじゃないの?』




そう、隆志を睨み付けて


そのまま部屋を飛び出した。