「おかしくねぇよ、仕事が忙しくてな。」
『ふーん…まぁ、忙しいのはいいことだけど…』
「悪い!今から打ち合わせなんだ。」
またな、そう言って一方的に電話が切れた。
……やっぱりなんか変。
気掛かりではあったけど
あんまり気にしない事にして
ジリジリと照り付ける太陽を見上げた。
『さてと…』
アタシには今日
一大イベントがあった。
キャメル色のレンガの塀と平行に歩く。
通い慣れたこの道。
隆志のマンションが見える場所まで来ると
今日は、足取りが軽かったせいか
やけに、いつもよりも早く着いた気がして
自然と笑みが零れた。

