それから一週間ほど経った日の夜だった。 ユキからの着信が鳴ったのは。 俺を責めるユキの声は 微かに震えていた。 ユキは 悲しいほど 苦しいほど 欲しいものほど それを手放すことで 逃げようとする。 それが手にとるように分かるのは 俺もまた、同じだから。 けれど、今の俺は知っていた。 いや、教えられた… そう言った方が正確だろうか。 逃げることで 苦しみと引き換えに得る、平穏な場所に 満ち足りた日々などやってはこないのだと。