その数時間後 静かな部屋にボソボソと響く声に目が覚めた。 ユキが誰かと電話で話していた。 『ヤダよ』 最初に聞き取れたのはそれだけ。 俺はうつろな意識の中、目を閉じたままで。 ぼんやりと ユキの声が聞こえてくる。 『分かったよ、今から帰るから。』 怠そうで、不満に満ちた声だった。 "帰る" その言葉に反応して 俺の眠気はすっかり覚めた。 「……帰るのか?」 腕の中に居たはずのユキは もうベッドを降りて 服まで着ていた。