完全に目を閉じたと同時に、唇に触れた柔らかいもの。

それが虎の唇だということはもちろんわかっていたけれど、私は抵抗もせずにそれを受け入れていた。

……だって、抵抗する理由がない。

虎とこうしていても私は全然、嫌ではなかったから。


しばらく唇を合わせたまま目を閉じていると、ぺろりと唇を舐められた感覚が走る。

それが合図のようにゆっくりと目を開けると、目の前には意地悪く笑う虎がいて。


「花の初ちゅう、もーらい」


目の前でそう囁かれた言葉は子供みたいなものだったけれど、囁いたその声は紛れも無く大人のものだった。


「じゃあ本当に行くわ。絶対に大阪来いよ?……あいつと一緒でも案内したるから」

虎には一生敵わないかも。

そう考えていると、それを確信させるような言葉がふってきた。