「あっ、そうか。
僕に会えたことが嬉しいんだね」

だけど男は私の握られた拳なんか目に入っていないようで、そんなことを言い放った。

この男は……本気だ。
本気でそう思っているんだ。

私が嬉しくて泣いているって。


「それよりこないだ僕とぶつかっただろ?
あのときいた男達、あれは誰かな?君は僕のものなのに」

全身を襲う恐怖感に気を失わないように耐えていると、ブロック塀に押さえ付けられている手首に鋭い痛みが走った。


ぶつかった?男達?

その言葉に心当たりがまったくなくて、痛みに耐えながら記憶を遡っていくと。

聖羅と爽吾君の誕生日プレゼントを買いに行った日のことを思い出した。


あの日、飲食店が並んだ通りで私は虎に手をひかれながら歩いていた。

そしてたくさんの人にぶつかってしまったんだ。

あの中にこの男がいたとしたら……話のつじつまが合う。