だからもういいって。

と、苦笑まじりに呟いた一成は一度も振り返ることなく帰っていく。

一成は私を送ってくれただけなのだからこれが当たり前なのだろうけれど。

こちらを一度も振り返らないその背中に、なんとなく寂しさを覚えた。


こういうとき、どうすればいいのか私は対処法を知らない。

なんとなく寂しいだなんてそんな子供みたいなことをそのまま伝えるのもなんだか変だし、第一恥ずかしい。


だけどそんなことを考えている間にも、一成の背中はだんだんと小さくなっていく。

どうすればいいのかわからない。

だけど……このままじゃ寂しい。


「い、一成!!」


私は気が付いたら精一杯の大声で、その背中を呼び止めていた。

緊張して少し吃ってしまったけれど。

でもそれは私が初めて、一成の名前を声に出して呼んだ瞬間だった。