~Takuto side~
俺らが音楽室から戻ると、教室には、誰も居らんかった。
すぐに慶太に電話したら、「裏玄関!」って言うて切られた。
慌てて、マルとふたりで、裏玄関に行くと、そこには…。
慶太と絵里のふたりがおって、裏の校庭の一角を見とった。

そこには、雨の中、抱き合う、たけちゃんと真莉が居った。
だいたいの状況は、分かるんやけど、なぜ、雨の中でなのかが、分からへんく…。
事情をあとから、慶太と絵里から聞いてん!
その時、俺は、たけちゃんと真莉は、本気の恋してんのやな~って、羨ましく想ってん。
と、同時に俺の本気の恋って…。

今まで、何人かの子と好きになって、付き合ったり、告白されて、付き合ったりしてきてんけど…。
今思えば、どれもこれも本気やなかった気すんねん。
俺もいつかは、たけちゃんたちみたいな、本気の恋するんやろか?って想ったんや。
その本気の恋って、やつが、こんなにも苦しいなんて…。
こんなにも辛いなんて…。
この時は、思いもしなかったんやけどな。

きっと、人は、人生の中で、一生に一度の恋ってあるんやって…。
この先、自分が体験するんやって、この時は、ホンマに知らなかってん。
ホンマにこの時は、たけちゃんと真莉が、付き合えて、ホンマのカップルになれて、むっちゃ、嬉しかってんな~。
この先、ずーっと先に訪れる、悲劇なんて、知る由もなく…。