清水先生が口を開く代わりに響いた、電子音。

……先生のPHS。



邪魔が入った。



……もぉ、せっかく退院許可を貰えるチャンスだったのに。



あたしはギュッと瞑っていた目を開け、ソレを睨み付ける。


やっぱりお母さんや看護師さんに頼むんじゃなくて


あたしが直接頼んで早く許可を貰わないと。

いつまでも許可してくれそうにないからこうして直談判しているのに。


「ごめん、また、様子見にくるからね」



清水先生は早口であたしに告げると

白衣の胸ポケットからPHSを取り出しながら出ていった。

――あたしの様子は見に来なくていいから、早く退院させてください。



出ていく清水先生の背中に心の中で声をかけた。


……結局また退院許可、貰えなかった。