椿も携帯から漏れる声を聞こうとあさみの耳に顔を近付ける。

「今から脱走した問題児連れて行きますから、高橋先生は病院で待ってて下さい。
……あ、はい。分かりました!はい、じゃ!」


初めて会話しているとは思えないほど、自然にあさみは何やら高橋と話してるし。



高橋が何か言ってるみたいだけど、



何て言ってるかあたしの所まで聞こえないから分かんないし。

唯一分かったのは、あたし達が今から病院に行くって事だけ。

「ちょっとどういう事?
まだ帰るつもりなんて無かったのに……」


携帯を閉じてあたしに返してきたあさみを見る。


「ちょっと心がからかってる先生を見たくなったの。
声は優しくて格好良さそう」



「あたしも会いたい!」

……そういう事。

何と言う、急な思いつき。



格好良くないって言ってるのに……。



「さ、帰りますよー病院に。
続きは部屋ですれば良いでしょ?」

バックから財布を取り出して席を立とうとする二人。

……会ってガッカリすればいいよ。

声は良いかもしれないけど、実際見た本人はイメージ違うから。



「ほら立つ!」



ちょっと納得できないような顔をしていたら、あさみと椿に腕を引っ張られて、あたしはファミレスを出た。