『いらっしゃいますけど……』


不思議な顔をしながら答えた看護師さんに、あたしは高橋の方を見ずに言ったんだ。



『消毒してもらう先生、清水先生が良いです。清水先生でお願いできませんか?』



って。






その時の高橋の顔はきっと忘れないと思う。



傷付いたような、悲しそうな顔。



『……じゃあ、清水先生を呼んで来ますね』


看護師さんが戸惑いの眼差しを高橋に向け、口を開く前に。



高橋は静かにそう言って出ていった。



代わりに来てくれた清水先生は、何も聞かずに消毒してくれた。



『……消毒、清水先生が良い』



そんな我が儘を言ったあたしに、清水先生は



『分かった。高橋先生に話して消毒は先生がする事にするね』



そう言ってくれた。