「岡本さん?何処に、行くんですか?」
後ろから聞こえた優しい声に、あたしの体はビクッと反応する。
「……ちょっとトイレに」
振り向きざまに言うと、にっこりと笑った高橋と目が合う。
「トイレはこっちですよ」
そういって指差すのは反対方向の廊下。
そんな事分かってるわよ!
何回もここに入院してんだから。
心の中で言い放って、高橋を睨む。
ってあたしも、もう少しマシな嘘をつけば良かった……。
あームカつく。
……コイツだって、あたしが今から何をしようとしてたか知ってるくせにわざわざ聞いてきて。
「あんたさぁ!
あたしが何処へ行こうとしても関係無いでしょ!?
院内に居るから!いちいちウザイ」
部屋から出ようとするたびに何処へ行くのか聞いてきて……。



