この人混みの中で。


見つけるの、難しいはずなのに。


「……音」



「音?」


高橋は黙って頷くと指差す。



指差す方向には……ゲームセンター。







「電話越しにゲームセンターの煩い音が聞こえてきたからすぐに分かった。で、見てたら走ろうとしてて……今」


そうだったんだ。


まさか電話で聞いた音で自分の場所がバレてしまうとは思わなかった。


ってか、周りの音とか全然気にしてなかった。



「で!あれだけ走らないでって言ったのに何で走るの?
どこに行くつもりだったの?
発作起こしたら下手したらどうなるかなんて、分かってるよね?」


どんどん高橋の口から出てくる言葉。


掴んだ腕のせいで逃げることもできず、気まずくなったあたしは俯く。



初めて……高橋があたしに怒鳴った。



初めて怒った。