写真展に行きたいって言ってるのに。

大人しくしておけば起こらないだろう発作を心配して行かないと言い張る高橋。



睨んでいた視線を伏せて、膝の上に持っているレモンティーの缶を見つめた。


―――高橋は分かってない。



あたしがどんな思いで高橋を誘ったのか。

「……分かって下さい。
写真展よりも岡本さんの体の方が大事なんですよ」

優しい声が聞こえてきてあたしの頭に高橋の手が置かれる。

あたしは、その言葉に対してもう言い返す気にもなれずただ、



高橋の前で涙を見せたくなくて唇を噛み締めた。

あたしの頭を撫でるような高橋の行動にも、いつもなら馬鹿にしてると思って苛々するけど、そんな事も思わない。



高橋は退院してから行けばいいって言うけれど。



あたしはどうしても退院してからじゃなくて 今 行きたい。



写真展の開催期間が退院する前に終わってしまう、と言う理由もあるけれど。

他の理由もしっかりあるんだ。

……高橋には絶対言わないけれど。

「……元気になったら誰かと行ってください」

ほら。



【元気になったら行きましょう】


ではなくて、


【“誰か”と行ってください】



退院したり、手術をしてしまったらきっと
高橋はあたしに構わなくなる。